クラウドエンジニアに求められる知識や技術は、サーバーやネットワークといったインフラ領域だけでなく、プログラミングを含めたフロントエンド・バックエンドに至るまで多岐に渡ります。また、技術力だけでなく、クライアントとスムーズに意思疎通できるコミュニケーション能力のようなソフトスキルも重要です。ここではクラウドエンジニアの T.K さんに、仕事内容やキャリア成長に役立つポイントについて伺いました。

落とし穴
T.K さんは、現在の会社に2023 年 10 月に入社。転職のきっかけはYoutubeで「高還元SES会社」の「還元率」に関して注意喚起する動画を視聴して、自身の現状と照らし合わせて危機感を覚えたことだと言います。エンジニアとしてのキャリアや給与にお悩みの方は、ぜひ今回のインタビューを参考にしてみてください。
給与への期待から始まった
転職の道
仕組みについて調べたこと
転職活動をしていた当時もSES企業で働いていました。家庭の事情で四国地方への移住予定があり、当時の所属会社に相談しましたが、四国エリアには案件がないということだったので、やむを得ず転職を検討しました。転職活動を進める中で、四国地方にも案件があり、還元率が75%という企業から内定を頂けたため、承諾しました。
当時の所属会社は還元率が60%だったため、「15%も上がるのか」と単純に喜んだのですが、実態は大きく違っていました。きちんと確認しなかった私も悪いのですが、75%の中身には会社負担分の社会保険料や賞与の積み立て分が含まれており、実際の支給額は転職後の方が下がる結果になってしまったのです。再転職は短期離職となるリスクがあるため、しばらくはその会社で働くべきか悩み、ネットで情報収集をしている中で見つけたのが、「還元率の闇」について解説するYoutube動画でした。
外の強制がなくなった
年収の面では、前職から150万円程度上がりました。また、担当営業が必ず年に一度以上の単価交渉を行ってくれますし、在籍年数に応じてマージンが減る制度もあり、年収アップが期待できることも大きな違いの一つです。
年収以外の面では、前職では業務時間外で目標管理の時間を設けなければならなかったり、内勤社員向けイベントへの参加を強制されることを負担に感じていたのですが、現職ではすべてのイベントが自由参加ですし、業務時間外の活動の強制もないのでストレスが減り、時間的な余裕も増えました。
コミュニケーションが
苦手だからこそ
準備に時間をかける
向いている人
クラウドエンジニアに限らずエンジニア全般に言えることですが、技術職なので最新の技術トレンドのキャッチアップや業務で扱わない技術に触れておくことも重要です。
技術が好きであれば、そうした自主的な情報収集や実践が苦にならないため、その分成長しやすいですし、仕事自体も楽しんでできるでしょう。
一方で、技術への好奇心がそれほどでもなくても、コミュニケーションスキルがあればお客様やベンダー、チームメンバーとうまく連携してプロジェクトを前に進めることができます。かくいう私は実はコミュニケーション能力に自信がないのですが、その分事前準備を徹底するようにしています。例えば会議であれば、何を話すべきか組み立て、想定される質問と回答を用意してから臨むようにしています。
柔軟な適応力
プロジェクト開始当時に要件を合意していても、途中で追加の要件が出てくることはよくあります。そのため、要件が変わらないことを前提にしてスケジュールを立てると対応できなくなってしまいます。
変更があることを見越して余裕を持って進行すれば、急な追加要件にも慌てることなく対応できるでしょう。また、企業やプロジェクトごとに扱う技術、プロジェクト進行において利用するツールなど、ローカルルールが異なることも多いので、その都度キャッチアップして順応していくことになります。
若いエンジニアの成長を
後押ししたい
エンジニアという職業は収入の安定という意味では魅力的であるものの、技術職という特性上、万人にとっての正解ではないとも思います。今後は、これからエンジニアを目指す方やエンジニアとして働いている中でキャリアや給与について悩みを持っている方のサポートができればと考えています。
現在の所属会社では未経験・微経験者の教育と採用に関心が高まっていて、私もその取り組みに積極的に関わっていくつもりです。転職活動は少なくないエネルギーを必要としますし、失敗したらどうしようという不安とも戦うことになりますが、転職に失敗してもそこで人生が終わるわけではありません。行動しても不満が解消されない可能性はありますが、リスクを恐れて行動しなければ、不満のある現状は確実に続くのです。後者の方が嫌ではないでしょうか。
客観的な評価がキャリアの
方向性を決める
ポイント
把握してほしい
転職するにあたっては、自分のスキルやキャリアを棚卸して、客観的な市場価値を知ることが重要です。
主観的な感覚では「こんなこと経歴として書いても評価されないだろう」と過小評価したり、「この経歴ならこのぐらいの年収になるはず」と過大評価したりしてしまいがちですが、多くの場合は想像どおりにはなりません。「この経歴・このスキルならこのぐらいの案件・求人に応募できて、年収はこのぐらいになる」という客観的な評価基準を持っていれば、自分の現在地を正しく知ることができ、次に向かうべき場所が見えてくるはずです。
同じ仕事をする場合でも所属する会社によって給与が異なる場合があり、特にマージンを引かれた上で給与が支給されるSES企業では、自分の仕事の市場価値を低く見積もってしまいがちです。すぐに転職しない場合でも、気になる企業のカジュアル面談を受けてみたり、転職エージェントに相談したみたりなどして、自分の客観的な市場価値を知っておくことが大事です。
アドバイス

自分に足りないものがわかると、努力やキャリアの方向性がはっきりすると思います。
例えば、私が勤めている会社では、入社前の営業担当者との面談で、自分の市場価値や今不足しているスキルがわかるので、そこで将来の道筋が立てやすくなります。
転職活動中、応募先から「今のレベルでは紹介できる希望案件がない」と判断されたとしても、スキルを磨いてから再チャレンジしてみるなど、恐れず前へ進んでほしいですね。